ビジネス・技術

パンダのキャラクターが運ぶ、脱炭素の未来。サカイ引越センターが屋根の上から届ける『地域のインフラ』という社会貢献 【インタビュー】

「まごころこめておつきあい」のフレーズとパンダのキャラクターでお馴染み、引越業界最大手のサカイ引越センターさまは今、創業の地・大阪府堺市で新たな「まごころ」を形にしています。それは、拠点の屋根を活用した太陽光発電による地域への貢献です。

トラックで街を駆け抜け、人々の暮らしの門出を支えてきた同社が、なぜ、堺市が推進する「堺市版オフサイトPPA事業(※)」に発電協力事業者として参画し、自社施設に設置した太陽光発電設備より、堺市役所本庁舎へ再生可能エネルギーの供給を行っているのか。

2026年2月の供給開始にあたり、本件の推進を担う秦氏と堤谷氏のお二人に、取り組みに込めた想いやその舞台裏を詳しく伺いました。

(※)堺市が推進する「堺市版オフサイトPPA事業」は、市内事業者の屋根を活用して太陽光発電を行い、その再生可能エネルギーを市役所本庁舎へ供給する取り組みです。地元の民間事業者が太陽光設備を設置・維持し、脱炭素化と地域共生を目指す枠組みで、サカイ引越センターなどの民間企業が太陽光発電の供給源として参画しています。

(参考)オフサイトエリアでの取組/堺市ホームページ

<インタビューご協力>

株式会社サカイ引越センター

  • 社長室  課長 秦 康之 氏
  • 社長室  事務副主任 堤谷 太陽 氏

―――――――
(合わせて読みたい)
「脱炭素なら何でもいい」時代の終焉。アイ・グリッドが提唱する“屋根”からはじまる地域GXと大阪府堺市の事例【アフターレポート】
―――――――

 

キャラクターと社名に込められた、愛される企業への想い

-まず、サカイ引越センターといえばあのパンダのキャラクターが印象的です。改めて、その由来を教えていただけますか?

社長室  課長 秦 康之 氏

秦 氏:弊社の創業(1971年)が、ちょうど上野動物園にパンダが来日して日本中が熱狂していた時期と重なっていました。当時からパンダは皆に人気があり、パンダように人気のある会社になりたいという願いを込めてキャラクターに採用したのが始まりです。お子さまにも親しんでいただいており、例えばお子さまが「パンダの段ボールが欲しい」と言ったことをきっかけに、弊社を選んでくださる親御様もいらっしゃいます。

 

-社名の「サカイ」も、やはり堺市に由来しているのでしょうか?

社長室 事務副主任 堤谷 太陽 氏

堤谷 氏:はい。サカイ引越センターは、もともと泉北ニュータウン開発に伴う引越しのニーズに応える形で創業した経緯があり、地域への感謝と愛着を込めて、地名の「堺」が入った社名になりました。当初は漢字の「堺」から現在はカタカナ表記の「サカイ」となりましたが、創業55年目を迎えた今でも、この街への想いは変わりません。

 

引越運送を主軸に置く企業だからこそ向き合う「脱炭素」という社会的責任

-今回、堺市の「堺市版オフサイトPPA事業」に参画された経緯を教えてください。

堤谷 氏:弊社は堺市に本社を構えており、以前から堺市様とは様々な形で協力・支援の関係を築いてまいりました。直近では、市民の方々の環境に対する行動変容を促す「エコライフポイント」事業でご一緒させていただきました。また、弊社がイベントを開催する際には堺市様に協力いただき、市民の方々に喜んでいただけるような取り組みを共同で実施しております。
その中で、今回の「堺市版オフサイトPPA事業」という取り組みにおいて、弊社としてさらにお手伝いできる機会だと考え、参加を決定しました。
補助金を活用しながら、これまで太陽光パネルを設置できていなかった施設にも設置することができたという点も、決め手の一つとなりました。

秦 氏:地域とのつながり以外の観点で言いますと、弊社がいかに環境に対して何が貢献できるのかっていうのは、すごく大事なキーワードだと思っています。
私たちは引越運送として日々トラックを動かす中でCO2を排出しており、環境問題は切り離せない課題だと認識しています。
そんな折、この堺市様とのお話しをいただきました。企業としてどう環境に貢献できるか模索している中で、この取り組みを通じて少しでも力になれればと感じたことも、重要なポイントでした。

複数の施設から生まれる再エネ(余剰電力)を、堺市役所 本庁舎へ循環

 

「堺モデル」が実現して感じたこと

この取り組みは、地域との共生に配慮し、地元事業者による太陽光発電設備の設置から電力供給、公共施設での利用まで一貫した枠組みとして進めることで、再生可能エネルギー活用の最大化を図る画期的なモデルです。“堺モデル”として全国の同様の課題に直面する自治体のロールモデルとなることが、堺市長からも期待されています。

―――――――
(合わせて読みたい)
万博会場から発信された「堺モデル」の共創戦略とは?都市型再エネの壁を越える「循環型電力」が目指す次世代都市づくり 〜大阪・関西万博テーマウィークアフターレポート〜
―――――――

- 供給開始に至るまで、苦労された点や実際に稼働後の課題はありますか?

堤谷 氏:弊社の建物は複数あり、それぞれ築年数や屋根の素材によって太陽光設備の設置の可否が異なるため、一つずつ精査し調整するのは苦労しました。
また、これは堺市ならではの難しさなのですが、ある施設の近くには古墳があったため、景観への配慮など設置に関して慎重な検討が必要な部分もありました。
個人的には、こういった設置に伴ういくつかの苦労を乗り越えて実現できたことに感慨深いものがあります。

また、だからこそ、先日のEXPO 2025 大阪・関西万博に始まり、2031年春になにわ筋線開業などによって今後さらに大阪や堺市がさらに注目される中で、今回の環境への取り組みを、他の様々な活動にも繋げていきたいと強く感じています。

 

屋根の上に設置された太陽光パネル

秦 氏:正直なところ、当初は自分たちがどれほどすごいことをしているのか、具体的なイメージが湧きづらい部分がありました。自社の建物に設置した太陽光パネルが、実際に地域に対してどのように貢献できているのかが見えにくかったためです。

しかし、アイ・グリッド社が管理している太陽光データの「見える化」画面を通じて、実際の発電量や余剰電力量の動きを見ると、自分たちの建物が生み出した電気が実際に活用されているのだと実感できるようになりました。

太陽光データの「見える化」ができるアイ・グリッドの「R.E.A.L. New Energy Platform」

秦 氏:このような先進的な事例は、その価値が周囲に伝わりにくいという課題があると感じます。だからこそ、こうした貢献の内容を積極的にアピールしていくことが、我々に課せられた次の課題だと考えています。

 

- 今回の「堺モデル」に対して、現在はどのような手応えを感じていますか?

堤谷 氏:弊社が引越しだけでなく、電力という分野でもお手伝いできることを大変嬉しく思っております。自分の会社が供給する電気が、堺市役所などで使われていると知ると、やはり少し誇らしい気持ちになりますね。

また、他の自治体でもPPA(電力販売契約)は広まっていますが、自治体単位でこれほど多くの事業所が参加して取り組んでいる事例は先進的だと思います。

令和8年2月27日の段階で、採択企業は11社15位施設に (堺市ホームページ

秦 氏:昨今、メガソーラーをめぐる問題が注目され、太陽光発電そのものに悪いイメージがつきかねない状況です。しかし、自然を切り開くことだけが太陽光発電ではありません。土地が限られる日本では、今回の「堺モデル」のような既存の建物を活用する方法こそが、今後の太陽光発電普及の鍵となると考えています。

私は以前20年ほど北海道で勤務していたのですが、その際、多くの地域で過疎化が進むのを目の当たりにし、地域をいかに活性化させるかが重要だと痛感しました。その経験からも地域貢献は非常に重要だと考えています。
今後も地域と一体となって、様々な形で貢献していきたいです。

 

地域貢献の重要性と、その価値を社内外へ波及させる意義

-サカイ引越センターさまの中では、この取り組みについてどのような反響がありますか?

堤谷 氏:私は入社2年目ですが、同期との間でもこの太陽光パネルの取り組みは話題になります。以前、実際にドローンを飛ばして設置されたパネルを見学する機会があり、若手社員の環境問題への関心は非常に高いと感じています。

秦 氏:特に我々よりも若い世代の方は、環境問題やCSR、社会貢献に対する意識が格段に高いです。そういった意味でも、弊社が社会貢献に取り組んでいることを積極的にアピールしていくことは重要です。この取り組みが全国的に広がっていけば、さらに良い社会になると期待しています。

 

-この「堺モデル」は、他の企業や地域にも広がる可能性を秘めていますね。

秦 氏:はい、むしろ広めていかなければならないと考えています。多くの企業が「何をすれば良いかわからない」という状況にある中で、こうした成功事例を横展開していくことが極めて重要です。この取り組みが多くの自治体に広がり、メガソーラーとは違う新しい太陽光発電の形が確立されることを願っています。

堤谷 氏:この取り組みはIR資料などでもアピールできるポイントだと考えています。特に海外の投資家は環境問題への関心が高いため、非常に有効です。現在、堺市内のほとんどの事業所に太陽光パネルを設置していますが、今後は全国に200以上ある拠点を活用し、この取り組みを全国に広げていきたいと考えています。

再エネ循環で環境や地域に貢献する「堺モデル」の取り組みを、全国へ

 

- 最後に、今後の展望をお聞かせください。

秦 氏:最初は大変な部分もあるかもしれませんが、一度、太陽光発電設備を設置すれば、その地域に様々な形で貢献し続けることができる可能性が広がります。どうか面倒くさがらず、まずは興味を持って前向きに検討していただきたいです。積極的にこのような取り組みに参加してくださる企業が増えることを、期待しています。
また、アイ・グリッド社だけでなく、我々も一体となってこの取り組みを広めていきたいと考えており、良きパートナーとして共に歩んでいきたいです。

 

(文:グリラボ編集部)

 

【取材を終えて】
日本最大級のシェアを誇る引越し専業企業、サカイ引越センター様。本業である引越し事業への真摯な取り組みはもちろん、企業の社会的責任として気候変動対策にも高い意識を持ち、精力的に活動されている姿が非常に印象的でした。
特に、活動の周知を通じて社内外のマインドセットを変えていくという「波及効果」を重視する姿勢には深く共感しました。ぜひ一緒に取り組んでいきたいと、改めて強く感じたインタビューでした。

 


アイ・グリッドは、スーパーや工場など法人施設の屋根を中心に太陽光発電設備を設置することで、自然を傷つけない屋根上の太陽光発電所として、全国46都府県に約1,300か所以上の開発を行っています。この、企業や施設の屋根上などに設置された分散型太陽光発電設備から生まれた、自施設で使い切れない余剰電力を、アイ・グリッド独自のAIを活用したアグリゲーション技術によって集約・制御しています。
公式WEBサイトはこちら >> 株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 

 

シェア