【インタビュー】「0円」よりも大事なのは、“ムダをなくす仕組み”。スマ電 ウィークエンドゼロ開発者が語る“再エネの矛盾”への挑戦
『土日の昼間、電力量料金単価が0円に』
一見するとインパクトの強い価格訴求の料金設定に見える「スマ電 ウィークエンドゼロ」ですが、開発の出発点は“安さ”ではありませんでした。
「最初に決めたのは“安く売る”ことではなく、“余らせない仕組みを作る”ことでした」
そう語るのは、本プランの開発責任者である株式会社アイ・グリッド・ソリューションズの那須 智仁氏。
背景にあったのは、日本で急速に拡大する再生可能エネルギー(以下、再エネ)が抱える“2つの矛盾”でした。
スマ電とは
「スマ電」は、株式会社アイ・グリッド・ソリューションズが提供する一般家庭(単身/ファミリー対応)向けの、電力プランです。2016年から提供開始し、35万世帯以上の累計加入実績があります。
「スマ電 ウィークエンドゼロ」は、スマ電の新しい電力料金プランです。太陽光発電の最大活用において重要な「土日の昼間(9時〜15時)」に着目し、この時間帯の電力量料金単価を0円に設定。単に安価な電気を提供するだけではなく、再エネの特性に合わせて電気の使い方を少し工夫することで、再エネをムダなく社会に循環させることを目的とした設計が特徴です。
スマ電 ウィークエンドゼロ なぜ「土日昼間0円」を実現できる?
― そもそも、なぜこのサービスを作ろうとしたのですか?
きっかけは、現場で見てきた「再エネを取り巻く2つの矛盾」でした。

きっかけを語る、開発責任者の那須氏
再エネは急速に導入が進んでおり、環境に良いものとして期待されています。しかし一方で、山を切り開く大規模なメガソーラーなどに対して、景観や生態系への影響を懸念する声が高まっています。再エネを増やすこと自体は進んでいるものの、持続可能な方法とは言えない矛盾です。
私たちは全国の法人施設の屋根や駐車場を活用し、新たな土地開発が不要な太陽光発電だけに取り組んでいます。発電した太陽光の電気は設置先の施設内で優先的に使われますが、時間帯によっては消費量より発電量の方が多くなることがあります。これは前述のメガソーラーや、その他の再エネでも同様に言えることですが、再エネを発電しているのに、使われなければCO2削減につながらないという矛盾が生じます。
この二つの矛盾をどう解消するか。
「再エネを増やすこと」そのものが目的になってしまい、本当にCO2削減につながっているのか、社会にとって持続可能な形なのかという視点が、置き去りにされています。
再エネを増やすと同時に、“今ある再エネをきちんと使い切る仕組みをつくる”ことが、このサービス開発の出発点でした。
― なぜ「週末の昼間」に絞った設計にしたのでしょうか?
再エネ、とくに太陽光は「発電量をコントロールできない電源」です。
屋根上太陽光を導入した法人施設のうち、週末に稼働が停止する工場などの施設では、電力消費が大きく減少する点に着目しました。発電量が最大になる昼間と、法人需要が減る週末が重なることで、最も“再エネを活かしにくい時間帯”が生まれています。
この課題を解消しないまま発電設備だけを増やしても、電気を送る仕組み上、発電の一部を止められてしまうことがあります。結果的に再エネを活かしきれず、CO2削減にも繋がりません。
だからこそ、再エネの発電量が多い時間帯を、あえてサービスの核として、施設で使いきらない再エネも“ムダ”にすることなく、ご家庭へ循環させる仕組みとしています。

― 「0円」を最初から狙っていたわけではないのですか?
「0円」という表現を使うと、どうしても安さだけに注目が集まりがちですが、価格を下げること自体が目的ではありませんでした。
世の中には「とにかく安い電気を作る」「補助金前提で価格を下げる」といった取り組みもありますが、それでは電力の使われ方そのものは変わりません。
私たちが重視したのは、“再エネの発電量が多い時間帯に、需要をきちんと動かすこと”でした。
そのために、あえて分かりやすい形として「土日昼間0円」という仕組みを採用しました。
これは価格競争のためではなく、再エネの特性に合わせて生活者の行動変容を促すための設計です。
つまり「0円」はゴールではなく、再エネを社会に自然に組み込むための“仕掛け”だと考えています。節電のように「我慢する」アプローチではなく、使う時間を工夫するだけで、環境負荷を下げられる。この体験を多くの方に知っていただくための「入口」として、あえて「0円」という言葉を使っています。
― 開発で最も苦労した点は何でしたか?
一番難しかったのは、「理想論」と「現実の電力運用」を両立です。再エネを余すことなく使うという理想だけでは、電力は安定して供給できません。需給バランスの維持や複雑な制度への適合、そして独自の調達設計など、実運用における制約は非常に多くありました。その中で私たちがこだわったのは、“環境に良いけれど不便”なサービスにはしないことです。
仕組みは高度でも、ユーザーにとっては難しく考えることなく自然に再エネが日常生活に溶け込む。
サステナビリティを特別な行動にしない設計を目指しました。

ユーザーにとってシンプルで分かりやすい表現にこだわり、専用WEBページもチームで何度も議論を重ねて構築
― 実際に「土日昼間0円」になったら、どんな使い方をしたい人が多いのでしょうか?
既存契約者の方にアンケートを実施したところ、665件の回答を得ることができましたが「我慢せずに快適に過ごしたい」という声が圧倒的に多い結果になりました。

最も多かったのは、冷暖房の利用(277件)です。
「エアコンを気にせず使いたい」「家中どこでも快適にしたい」「床暖房や加湿器もまとめて使いたい」といった声が多かったです。電気料金の高騰や環境意識の高まりから、日常的に節電を意識しているからこそ、暑さや寒さを我慢せず、快適性を高めたいというニーズが強く表れています。
次いで多かったのは、娯楽・くつろぎ用途(89件)。
映画や動画視聴、ゲーム、昼寝など、「お家時間をゆったり楽しみたい」という回答が目立ちました。
また、洗濯・乾燥・掃除・食洗機などの家事をまとめて行いたい(84件)という声も多く、「無料の時間帯に家事を一気に済ませる」という新しい生活リズムを想定している方も少なくありませんでした。
そのほかにも、オーブン調理やお菓子作り(55件)、EVやスマホなどの充電(52件)、ペットのための空調管理(35件)、昼間の入浴・給湯(21件)など、使い方は非常に多様でした。
興味深かったのは、「無料でも無駄遣いはしない」「環境への配慮は続けたい」といった省エネ意識の声(52件)も一定数あったことです。
私たちが目指しているのは、“たくさん使わせる”ことではありません。
再エネが多く発電される時間帯に、無理なく生活の行動を少しシフトすることで、快適さを保ちながら、再エネをきちんと活かす。その感覚を、ユーザーである皆さんと共通のイメージとして持てていることは、とても印象的な結果だと感じています。
― このサービスを通じて、どのような未来を実現したいと考えていますか?
私たちが目指しているのは、再エネが増え、さらにその再エネがムダなく社会の中で循環することで、環境価値と経済メリットの両方がユーザーに還元される社会構造への転換です。
これまで再エネは、「環境には良いがコストがかかるもの」と受け止められがちでした。
しかし、発電量と消費量のバランスを時間帯単位で適切に合わせることができれば、再エネは“高いコストがかかる理想論”ではなく、“合理的なインフラ”に変わっていきます。
具体的には、発電量が多い時間帯にあわせて消費も増やすことができれば、今ある再エネが最大限に活用され、電力システム全体の無駄なコストも下がっていきます。その結果、電気代軽減としてユーザーにメリットが還元される循環型の仕組みが生まれます。
環境に良い行動が、我慢や負担ではなく、経済的かつ合理的に選択される社会をつくること。このような再エネ循環の仕組みを広げることが、GX(グリーントランスフォーメーション)の実現につながると私たちは考えています。

再エネを使うことが、楽しく生活者の日常に溶け込むことを目指したいと語る那須氏
開発者インタビューまとめ:
再エネが、合理的で楽しい選択になる社会へ
「0円」という強い言葉の裏側には、再エネを“安く売る”よりも、“ムダなく活かす”ことにこだわった思いがありました。
電気の未来は、発電所だけで決まるものではありません。
私たち一人ひとりの「使い方」も、その一部なのかもしれません。
スマ電 ウィークエンドゼロは、一見すると「土日昼間0円」というインパクトのあるサービスです。しかし、その背景には単なる価格訴求以上の、再エネを余すことなく活かすための設計思想があります。
太陽光発電量が多い昼間に電気消費量を増やす。
その仕組みを作ることが、CO2削減の実効性を高め、社会全体の電力コストを下げる鍵となります。
こうした再エネの循環は、ユーザーの経済的負担を軽減する仕組みでもあります。
『我慢ではなく、楽しみながら環境にやさしい選択ができる社会へ。』
スマ電 ウィークエンドゼロは、その最初の一歩として、私たちの生活に新しい選択肢を提供しています。
>> スマ電 ウィークエンドゼロ WEBサイトはこちら <<
お話を伺ったのは

那須 智仁 株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 執行役員 / エナジートレーディング部 部長
2007年、アイ・グリッド・ソリューションズに入社。法人営業を経て、2017年より電力小売事業でのプランニング、電源調達・需給管理、オペレーション全般を担当し、現職に至る。法人向け・家庭向け問わず、循環型電力供給プランの責任者として、新サービスの立ち上げを推進。スマ電 ウィークエンドゼロの開発責任者として本プロジェクトを率いている。